バリュー・チェーン戦略

日本経済新聞社が、
一般企業の研究者を対象に
今後2〜3年という近未来の有望技術と
有望銘柄を答えてもらうという
アンケート調査を行いました。

そして、有望技術の1位は「次世代エネルギー」。
有望銘柄の1位はシャープという結果が出ました。

数ある日本の太陽電池関連銘柄の中で、
シャープがNo.1に選ばれた理由は、
主に2つあると思います。

1つは、次世代の主流になることが確実な
薄膜型太陽電池に強みがあること。

もう1つの理由は、
太陽電池ビジネスに特化した
バリューチェーンの構築を計画しているからです。

1つめのポイントについてご説明します。
太陽電池ビジネスを実用段階にのせる過程で
1番のネックになっているのは、コストの高さです。

現状では、電気を1キロワット発電するのに、
石油なら約15円ですみますが、
太陽光発電では約45円と
3倍のコストがかかってしまいます。

そのコスト高の1番の原因は、
太陽電池の材料となるシリコンの価格が
高騰していることにあります。
ここ数年、世界中で
太陽電池ビジネスに参入する企業が増え、
太陽電池製造量が大きく増加したことで、
シリコンの価格が2倍に跳ね上がったのです。

薄膜型は、
シリコンの替わりにガラスやステンレスを土台にして、
その表面にシリコンの薄膜を
形成するタイプの太陽電池です。
そのため、シリコンの使用量を
従来タイプ(結晶シリコン型)の1/100程度まで
減らすことができ、
価格については、半分程度まで
下げることができる技術なのです。

現在、薄膜型の市場シェアは5.2%と低く、
次世代の太陽電池として注目されているのです。

次に2つ目のバリューチェーンについてです。
バリュー・チェーンは、
意味がわかるようでわからない言葉なので、
少し説明を加えておきましょう。

バリュー・チェーンは、
ハーバードビジネススクールの
マイケル・ポーター教授が提唱した概念で、
製造業者において製品が消費者に届くまでの
付加価値を生み出す連続したプロセスのことをいいます。

主なプロセスは、
購買物流、製造、出荷物流、販売マーケティング、
アフターサービスの5つです。

つまり、昨日“水ビジネス”の際にもお話した
水ビジネスの川上〜川下までを一手に握る
経営手法のことを言うわけですね。

太陽電池ビジネスはまだ黎明期ですから、
多くの企業が利益を上げるチャンスがたっぷりあります。
しかし、最終的に利益を独占することができるのは、
“太陽電池メジャー”ということになります。

町田勝彦・シャープ会長兼CEOは、
インタビューで以下のように述べています。

『うちは何も、太陽電池のパネル製造だけを
考えているわけじゃないよ。
材料に始まり、製造装置、
太陽電池パネルの生産から、
ソーラー発電所のプラント建設やメンテナンス、
実際の発電事業にいたるまで、
太陽光発電に関する
ありとあらゆる商売をやる。
従来の製造業の枠組みを越え、
バリュー・チェーンのすべてに
ビジネスの領域を広げる。』


思えば、半導体や液晶の黎明期において、
シャープを始めとする日本企業は技術力で、
世界の同業他社を圧倒していました。
ところがその後、
投資力のある韓国、台湾勢に追いつき、追い越され、
最後には、主役の座を奪われてしまったという
苦い経験があります。

同じ過ちを繰り返さないためにも
「バリュー・チェーン」戦略は
大きな意味を持ってくると思われます。

さて、シャープは
太陽電池業界のメジャーになれるでしょうか。

(2009/4/14 記)