好調マーケットの死角

昨日の東証一部市場の値上がり銘柄数は1013と
値下がりの551を大幅に上回ったそうです。
4〜6月期の決算において、
主力の製造業の在庫調整やコスト削減の進展が確認されて、
業績底入れの可能性が出てきたことが、
マーケット好調の背景にあるとされています。
はたして、この見方に死角はないのでしょうか。

決算の中身をよくよく確認してみると、
最悪期であった2009年1〜3月期と比較して、
赤字が縮小したというケースが目立つようです。

たとえば、7月30日に決算発表を行った
ソニーのケースを見てみると・・・。

2009年1〜3月期  営業損失 2943億円
2009年4〜6月期  営業損失  257億円

確かに、約2600億円赤字幅が縮小しており、
この数字が評価されて、
ソニーの決算発表翌日の株価は7%上昇しています。

他の主力製造業についても、
赤字大幅縮小 → 株価上昇
の図式が成り立っています。

しかし、この決算の内容を少し視点を変えて見てみると、
明るい見通しばかりではない
違った企業の姿が見えてきます。

りそな銀行の黒瀬浩一チーフ・ストラテジストは、
損益分岐点比率に注目しています。

損益分岐点比率というのは、
実際の売上高に対して、損益分岐点売上高が
何%を占めているかということを表した数字です。
損益分岐点売上高というのは、
売上と費用が一致して、利益も損失も発生しない
売上高のことをいいます。

具体的な例をあげて説明してみます。
実際の売上高が100億円、
損益分岐点売上高が80億円とすると、
損益分岐点比率80%となります。

この場合、実際の売上が20%減って80億円になると、
売上と費用がとんとんになる。
つまり、あと20%売上が減るまでは。
なんとか利益をあげられるということになります。

このように、損益分岐点比率が低ければ低いほど、
その会社に体力がある、
つまり、不況抵抗力があるということになります。

さて、話をもとに戻しましょう。

黒瀬チーフ・ストラテジストの話によると、
財務省の企業法人統計から
製造業の損益分岐点比率を算出すると、
1〜3月期は129%まで急上昇しており、
過去50年では群を抜いて高い水準に
跳ね上がっているそうです。
損益分岐点比率が100%を越えているということは、
赤字を垂れ流している状態です。

過去には企業業績が底入れすると、
損益分岐点比率は必ず100%以下に改善していましたが、
現在はまだそのような状態にはありません。

では、これから何が起こるのか。
企業は、黒字になるまでリストラを続け、
従業員の賃金や雇用は圧迫され続けることになります。
これでは、景気底入れとはいかないでしょう。

損益分岐点比率を下げるもう1つの方法は、
売上を上げることですが、
こちらも容易にはいきそうもありません。

4〜6月期は政府のエコカー減税やエコポイントの付与が
自動車や家電製品の需要を底上げしました。
これは、需要の先食いの可能性があります。
現状を考えると、どこかで息切れする可能性は
十分にあると考えられます。

さらに、グローバルな視点から
日本の「ものづくり」について考えてみると、
世界の消費の潮流は、
新興国向けの低価格帯商品に向かっています。

インドのタタモータースが
日本円で約21万7000円の新型車「ナノ」を発売したのは、
大変象徴的な出来事でした。

日本の製造業が追求してきた「高付加価値、高価格製品」は
行き場を失った格好となっています。

現在の上昇相場の死角について、
もう1度よく考えてみる必要があるかもしれません。

(2009/8/4 記)